JALが中距離のLCCのための子会社をつくり、2020年の夏ダイヤを運行開始の目標としているんですが、その概要がついに明らかになりました。
ブランドはZIPAIRという、ちょっとよくわからない(失礼)な名前となり、営業開始1年目は、まずはタイのバンコクと韓国のソウルに就航することになりました。
JALのLCC戦略について
JALグループのLCC戦略は、中期計画のローリングプラン2019にもあるとおり、短距離路線は従来からあるジェットスター・ジャパンを活用する一方、中長距離路線も、成田空港を拠点として、アジア欧米等の中長距離国際線に就航することを予定していました。
フルサービスキャリアであるJALは従来どおり短距離から長距離までカバーし、その価値を高める一方、気軽に旅行に行ける選択肢を提供するという考え方ですね。
LCCというと短距離路線のイメージが強いのですが、ジェットスターがナローボディ(B737,A320)を用いて短距離に就航する一方、JALが保有するボーイング787をLCCに転用することにより、東南アジアはおろか、欧米にもいずれは就航しようという考えをもっています。
現在はETOPSの基準を持っていないためできないのですが、記者会見ではLCC子会社の西田社長は「基準を満たしたら太平洋を渡りたい」「LCCで太平洋を渡るパイオニアになりたい」と述べ、アメリカ西海岸就航への意欲を示していたそうです。
日本では、ANAとJALという2つのフルサービスキャリアに対し、LCCには「安かろう悪かろう」のイメージがついちゃっているんですね。その間を埋めるという意図も、少なからずJALは持っているようです。
JALの中距離LCCのブランド名は「ZIPAIR」に決定
このように国際線中長距離LCCを運航するにあたって、JALは3月8日にエアラインブランド名を「ZIPAIR(ジップエア)」に決定しました。
また、これに伴い、2018年に準備会社として設立していた株式会社ティー・ビー・エルを、社名を「株式会社ZIPAIR Tokyo」に変更しました。
というのが私の率直な感想なんですが(笑)、ブランド名などへのJALの思いは以下のようです。以下はプレスリリースからの引用です。
『ZIPAIR』の名称は、英語で、矢などが素早く飛ぶ様子を表した擬態語“ZIP”から生まれた造語であり、「フライトの体感時間が短い」エアラインであることを表現しています。また、“ZIP CODE”(郵便番号)が持っている「さまざまな場所に行ける」というイメージや、デジタルファイルフォーマットの“.zip”のイメージを盛り込み、「至る所に日本人らしい創意工夫をつめて、計算し尽くされた移動体験を目指す」という想いを込めました。また、社名については、新しいエアラインのベースとなる地名であり、世界でも有数のカルチャー発信都市でもある「東京」を冠して『ZIPAIR Tokyo』としました。
ごめんなさい、私にはちょっと理解ができません(笑)zipファイルと飛行機に何の関係があるのか…。
まぁ名前よりも中身勝負よ中身、JALさん頼みますよ!!
当初の就航路線はバンコクとソウル
今回、このZIPAIRは2020年の夏スケジュール(3月末)から就航する予定で準備を進めているんですが、当初の就航路線は、以下の2つの路線で計画をしているようです(3月8日、国交省に事業申請を行いました)
- 東京(成田)=バンコク(スワンナプーム)
- 東京(成田)=ソウル(仁川)
この2路線の発表を聞いて、「えー、なんだかなぁ」と思った人、多かったのではないかなと思います。
バンコクはともかく仁川かよ!と思った人は一定数いるでしょう。私もそうです。
バンコク就航は想定の範囲でした。これは以前のJAL幹部の記者会見などでの発言からも東南アジアであることは読み取れましたし、そもそも絶対に失敗しない路線として、需要が旺盛、低価格ニーズもある(日本からの観光客もインバウンドも多い)となるとバンコク一択です。
もう一路線はどこになるのかなは興味をもっており、私はいっそデンパサール(バリ島)なんていいんじゃないかななんて思いましたが、蓋をあけてみたら仁川でした。
その昔JALは成田=デンパサール便を就航していましたが、経営破綻にともない2010年に休止している路線です。リゾート路線はどうしても単価が上がらず、搭乗率9割でも赤字路線とも言われていた路線です。
そんな路線でも、ボーイング787を使ってLCC運用すれば収益も持つのではないかなと思ったりもして夢を膨らましておりました(笑)
また、JALは最近ボーイング787からプレミアムエコノミークラスの座席を取っ払う改修を行っています(この春就航するシアトル線から導入)
それだけ供給座席が足りないということもあるので、そのあたりの路線にうまくLCCを活用して、JAL本体としてはプレミアムエコノミーを残してほしいぁなと思ってみたりもしました。
まあ、冷静になって考えてみれば2機の運用であれば、2機ともフル活用できないのはやむを得ないので1か所は近場にしなきゃいけないのはわかるんですが、成田=仁川はジェットスター・ジャパンの仕事なのではいかなと思ってしまうんですよね。
確かに現在ジェットスターは成田=仁川は就航していないのですし、台北や香港にはジェットスターが成田から就航してますからここは競合してしまうし…ということで、仁川に決まったんだと思います。
ただ、2年かけて機材は6機まで増やしていくことを予定していますので、北米西海岸や東南アジアのリゾート地など、今後路線の拡大には期待したいところですね!
使用機材はJALのボーイング787を転用
今回のLCCでは、現在JALが使用しているボーイング787-8を転用することになっています。
多くのLCCではエアバス320やボーイング737といったナローボディ機を使用していますが、今回JALはボーイング787のうち小さいサイズの787-8をします。
ボーイング787を使っている海外のLCC航空会社は、今回JALが中距離LCCの参考にしていると言われるノルウェーのジャン・エア・シャトルやシンガポールのスクートなどがあります。(どちらも経営がうまくいってないのは心配ですが…)
こちらは現在のJAL ボーイング787-8のエコノミークラスのシートです。
現在JALは世界でもめずらしく、ボーイング787シリーズにおいて横8席のシート配置とし、ゆとりをもたせていますし、前後の間隔も84センチメートルと広めに配置されています。かなり快適です。
でもさすがにこの機材をLCCに転用する際は、横は9列にし、過度の詰め込みは避けながらも、300席程度の配置とするようです。
また、正式には発表がありませんが、過去の社長インタビューなどをみるとLCCでも上級クラスを設定する方向で検討をしているようです。
さて、ボーイング787-8で300席仕様にすると書きましたが現在のJALのボーイング787のシート配置の中で最も古く、座席数が多いタイプがこちらです。
総座席数は206席になっています。これを1.5倍詰め込むわけですから、なかなか狭そうな感じですよね…。
イメージとしては、シンガポールのLCCであるスクートが、同じボーイング787-8を用いて2クラス制329席のシート配置で運行していますから、これを参考に、若干余裕のある造りにしていくのではないでしょうか。
スクートの場合、シート幅が18インチに、シートピッチが31インチと、ひと昔前のエコノミークラスとほぼ同じいくらいのスペックになります。
そう考えると、最近のエコノミークラスって広くなりましたよね。
スクートでは追加料金で足元がより広い座席なども販売していますので、ZIPAIRでも同様の座席を作るかもしれません。
スクートにも上級シート(スクートビズ)があって、配置は2-3-2の横7席となっています。
このスクートビズですが、シートピッチが38インチ、シート幅は22インチと、日本の航空会社のプレミアムエコノミーに近いくらいの感じですね。
まとめ
JALが展開する国際線中長距離LCCのブランド名がZIPAIRに決まり、2020年の就航路線としてバンコクとソウルを計画していることが発表されました。
JAL自体はフルサービスキャリアとして磨き上げる一方、新たな領域として中距離LCCを作るという方針の第1歩になるものだと思います。ちょっとソウルというのが残念な部分でありますが、3機体制になればまたちょっと運用も変わってきそうです。
JALよりもお手頃な値段でバンコクに行くことができるのはうれしい話ですし、JALマイルも(JALに乗るときよりも少ないマイルで)使えるようになれば非常に便利になるだろうなと思いました。
とりあえずバンコクに行きたいです…。