日本の大動脈である東海道新幹線には、のぞみ・ひかり・こだまの3タイプがありますが、飛行機などと違い早期購入で割引になったりするものがあまりないため、どうしても割高に感じてしまう人も多いかと思います。
そんな中、各駅停車タイプの「こだま」限定の割引きっぷ「ぷらっとこだま」というのがあります。少なくとも東京では広告がけっこう出ていて有名なきっぷですから、ご存じの方、利用したことがある方もいると思います。
一方で、こだまは各駅停車なので、ぷらっとこだまの利用が費用対効果で悪い場合も。
そこで、今日はぷらっとこだまの利用価値について、乗車区間別に考察したうえで、お得に利用できる方法を考察していきたいと思います。
目次
東海道新幹線を安く乗る鉄板の「ぷらっとこだま」
ぷらっとこだまとは、前日までに特定のこだま号を予約することで、通常の料金よりもかなり(20%以上)安くなる旅行商品です。
販売しているのはJR東海の子会社であるJR東海ツアーズになります。のぞみに比べて空席の多いこだまを、JRが窓口で直接安くするわけにはなかなかいかないので、子会社の旅行商品として安く売りだしているのです。
以前はJTBの窓口でも販売していましたが、2022年12月に販売終了しています。
指定席特急券にワンドリンクつき
ぷらっとこだまは、新幹線「こだま」の指定席の片道チケットのほか、おまけ程度にですが、ワンドリンク引換券がセットになっています(現在はチケットレスになっています)
600ml以下のソフトドリンク、350ml以下のビール、500ml以下の缶チューハイで利用することが可能です。
駅の売店でこのチケットを引き換えると、ジュースやビールと交換することが可能となっています。
こだまの運行頻度と制限あり
東海道新幹線の区間では、こだまは東京=名古屋間が1時間に1本、東京=新大阪間が1時間に1本運転されています。つまり、東京=名古屋が1時間に2本、名古屋=大阪は1時間に1本の運行頻度ということになります。
このほかに早朝や夜間に東京と三島を結ぶ便や、静岡と新大阪を結ぶ便などもあります。
また、ぷらっとこだまは、すべてのこだま号に設定されているわけではありません。一部のこだま号については対象外となっています。
例えば大阪発の場合、19:54発のこだまがぷらっとこだまで利用できる最終便となっており、それより後の便でも名古屋までは行くことが可能ですが、設定がなかったりします。
発着駅に制限あり
ぷらっとこだまは、各駅停車のこだまの割引運賃ですが、すべての駅を発着する設定があるわけではありません。
具体的には、東京、品川、新横浜、静岡、浜松、名古屋、京都、新大阪のいずれかを発着地とする行程のみ設定されています。まぁ政令指定都市の駅のみといういことですね。
ちなみに、これらの都市以外を発着地とする場合、こだまのグリーン車が割安に利用できる「EXこだまグリーン早特」が、自由席とほぼ同じ値段で利用することが可能です。こちらのきっぷは全駅に設定があるので、利用価値があると思います。
ぷらっとこだまの料金(2024.3価格改定対応済)
ぷらっとこだまには普通席用とグリーン席用がありますが、メインとなる普通席用の料金は以下のとおりとなります。なお、2024年3月に価格改定がなされ、本記事は反映済です。
区間 | 価格(円) |
---|---|
東京=静岡 | 5,400 |
東京=浜松 | 6,970 |
東京=名古屋 | 8,810 |
東京=京都 | 10,790 |
東京=新大阪 | 11,210 |
新横浜=静岡 | 4,780 |
新横浜=浜松 | 6,610 |
新横浜=名古屋 | 8,290 |
新横浜=京都 | 10,290 |
新横浜=新大阪 | 10,960 |
名古屋=京都 | 4,410 |
名古屋=新大阪 | 4,990 |
ゴールデンウィークや連休、お盆などを除いた通常期の場合、東京から名古屋までの料金が8,810円、大阪までは11,210円となっています。
東京から名古屋まで通常の料金だとのぞみの指定席で11,300円、東京から新大阪まではのぞみ指定席で14,720円かかることから、確かに安いですね。
また、ゴールデンウィークや夏休み、連休などの繁忙期には、ぷらっとこだまの運賃も15%ほど値上がりします。ただ、他の多くのお得なきっぷが使えない時期であっても、ぷらっとこだまは購入可能になっているのはありがたいところです。
こだまの所要時間
東海道新幹線こだまの所要時間をみておきたいと思います。
発着駅 | 所用時間 |
---|---|
東京 | |
80分 | |
静岡 | |
30分 | |
浜松 | |
50分 | |
名古屋 | |
60分 | |
京都 | |
15分 | |
新大阪 | |
標準的な所用時間は、東京から静岡までおよそ1時間20分、名古屋まで2時間40分、大阪まで3時間55分となっています。
のぞみだと東京から名古屋まで1時間40分、大阪まで2時間半で到着しますので、やはり各駅停車はそれなりに時間がかかりますね。
基本的に、品川、新横浜、熱海、京都以外のすべての駅で、のぞみまたはひかりに追い越されます。そのため、東京から大阪までの3時間55分のうち、駅での停車時間が50分くらいを占めます。これが意外とストレスというか、所用時間がより長く感じてしまうんですよね…。
ぷらっとこだまの利用で気を付けるべきルール
ぷらっとこだまは、とてもお得な運賃であるため、こだま号しか利用できないほいか、旅行商品であるため、いくつかの制約があるので紹介しておきます。
- 指定した列車のみ有効
- 途中下車不可
- 特定区間の運賃がついていない
一つ目ですが、JRの新幹線を含む特急は、指定した電車に乗り遅れても当日であれば後続の自由席を利用することができますが、ぷらっとこだまは切符ではなく旅行商品なので、このような取り扱いがなく、後続の自由席に乗車することができません。
規定上は、JRが15分以上遅延した場合に限り、チケットの払い戻しという形で対応してくれるのですが、払い戻しですので再度正規料金でチケットを購入する必要があります。
また、私鉄などの遅延については補償ゼロで、乗り遅れたら完全に紙屑になります。なので、ぷらっとこだまを利用する場合は、時間に余裕をもって新幹線の駅に向かう必要があります。
2つ目ですが、101キロ以上の乗車券についている途中下車も認められません。まぁこれは特急料金込みのセットなので、途中下車を考えることはないと思うので、あまり気にしなくていいと思います。
最後もちょっと大事な話で、ぷらっとこだまは、あくまで新幹線の駅と駅を結ぶ乗車券と特急券の料金しか含まれていないため、新幹線の駅までの乗車券が別途必要になります。
東京の場合、基本的には東京駅から目的地までの距離が101キロ以上であれば、出発地は「東京山手線内」、201キロ以上であれば「東京都区部」を起点するきっぷになります。(ただし、新幹線回数券は101キロ以上200キ以下で東京都区内となります)。
たとえば、東京駅から新幹線に乗る場合、「山手線内」であれば新宿や池袋から、「東京都区内」であれば西荻窪や浮間船渡、小岩から東京駅や品川駅までの運賃が含まれていますが、ぷらっとこだまにこれが含まれていません。
極端なケースとして、東京都区内で最も西にある西荻窪から東京までの運賃は400円かかります。「東京都区内」とついているきっぷであればこのきっぷで西荻窪から乗車できますが、ぷらっとこだまを利用する場合、400円のきっぷを購入して東京駅に向かう必要があります。
この差額が、他の格安切符との逆転現象を生み出す場合もあります。
この特定区間の運賃がついていないことと絡みますが、外から新幹線乗り場に直接入る改札しか利用できません。
たとえば、東京駅からぷらっとこだまに乗る場合、東京までJR在来線でくる場合は、一度丸の内側の改札を出て、東海道新幹線の改札から入り直す必要があります。
ぷらっとこだまの購入方法
ぷらっとこだまの購入は、Web上のみとなっており、みどりの窓口やJR東海ツアーズのカウンターでは購入ができません。
具体的にはJR東海ツアーズにぷらっとこだまの専用サイトがあり、こちらから購入します。
また、このときぷらっとこだまの申込に際してはEXサービス(「エクスプレス予約」または「スマートEX」)またはJ-WESTカード(エクスプレス)会員への会員登録が必要となります。
スマートEX会員は、年会費無料で登録できるサービスで、これに登録していると、東海道新幹線の各種割引切符(EXこだまグリーン早特、EX早特28ワイドなど)を購入することも可能となりますし、最近行列が激しい券売機に行かなくても新幹線切符を購入することが可能となるので、東海道新幹線に乗車するなら必ず登録しておいた方がいいです。
また、Web上で購入した後、チケットはチケットレス化されます。具体的にはEXサービスと同じように事前に交通系ICカードを会員サイトで登録し、新幹線改札機にタッチして乗車するという形になります。
チケットレスということで、以前は駅についたら改札近くの端末できっぷを出す必要がありましたが、この手間を省くことができるようになりました。交通系ICと
特に品川駅では、在来線から新幹線に乗り換える途中にこの機械がないため、一度改札の外にでて、チケットを引き換える必要がありました。今後はそのまま交通系ICで新幹線に乗車することができるため、特に品川駅利用者は利便性が格段に向上します。
また、交通系ICカードを持っていない人向けには、QRチケットが用意されています。マイページでQRコードを取得し、スクショしたり印刷したりした上で、対応している改札機にかざして乗車することも可能です。
また、このようなきっぷを事前に引き換える手間がなくなったため、引き換えの時間を意識せずに新幹線の駅に向かえばよくなったというメリットもあります。
一方で、スマホやICカードを持ってない家族がいる場合は少しめんどくさくなったかもしれません。
ぷらっとこだま以外の東海道新幹線の割引
正直、東海道新幹線は日本屈指のドル箱路線であるため、出張パックなどに使う企画乗車券は多いのですが、自由に誰でも購入できる割引運賃が少ないです。ただ、そんな中でも「ぷらっとこだま」以外にも、ネット会員限定の先得商品だったり、金券ショップで新幹線回数券をばら売りで購入して安くすることが可能です。
ネット会員限定・早得サービス
JRのエクスプレス予約会員になれあば、当日であっても購入する際に指定席新幹線の割引を受けられるほか、ぷらっとこだま以外にも早めの予約でさらにおトクな早特商品を利用することが可能です。
普通席では、「EX早得28ワイド」と「EX早得21ワイド」という切符があり、それぞれ28日前、21日前までに購入するとのぞみでも1~2割程度の割引を受けることが可能です。ただし、席数限定のため、人気の時間帯は速攻で売り切れます。
またグリーン車がお得に乗れる切符もあります。「EXグリーン早特3ワイド」ではのぞみやひかりのグリーン車が指定席料金並みで乗車できるほか、「EXこだまグリーン早特3」はこだまのグリーン車が自由席なみの料金で利用することが可能です。
金券ショップの回数券バラ売り・EX早特1
新幹線回数券のばら売りが金券ショップでよく売られています。私が新宿に行くことが多いこともあるのですが、けっこうお得で私も新幹線を利用するときは使うことが多いです。
現在は指定席の回数券がほぼ廃止されたため、自由席の回数券がメインとなっています。
また、この金券チケットで購入できる回数券のばら売りとほぼ同額の金額で新幹線自由席の割引きっぷが最近誕生しました。「EX早特1」という切符で、前日までにエクスプレス予約で購入すると、三島が3,730円、静岡が5,490円などと割引になっています。
正直、静岡や浜松の値段はぷらっとこだまよりも高いので選択肢にはならないのですが、ぷらっとこだまが設定されていない駅の場合は、これらのきっぷを使うのがお得です。
利用区間別にお得度と所要時間を考えてみる
今回紹介したぷらっとこだまと、その他の割引料金などなどを比較して、はたしてぷらっとこだまはどのくらい安くて、余計にかかる時間はどのくらいなのか、総合的にみて利用はお得なのかについて、区間別に考察していきたいと思います。
東京ー静岡・浜松
まずはのぞみが停車しない静岡県内の2大都市、静岡駅と浜松駅から考察していきましょう。
東京と静岡・浜松の間は、1時間あたり原則としてこだま2本のほか、1時間に2本あるひかりのうち、1本が両駅に停車するダイヤとなっています。
東京からの所要時間は、静岡まではひかりが60分、こだまが80分ですから両者の差は20分、浜松の場合はひかりが85分、こだまが110分ですので差は25分程度しか差がありません。
で、料金はこちらになります。
東京・品川=静岡 | 東京・品川=浜松 | |
通常料金(指定) | 6,410円 | 8,440円 |
EXこだまグリーン早特3(グリーン) | 6,140円 | 8,120円 |
通常料金(自由) | 5,940円 | 7,910円 |
EX早特1(自由・ひかり利用可) | 5,490円 | 7,250円 |
ぷらっとこだま(指定) | 5,400円 | 6,970円 |
静岡までをみたとき、ひかりなら念のため指定席を確保するでしょうから、通常料金は6,410円です。こだまであればまぁ自由席で大丈夫でしょうから5,940円となります。
一方、ぷらっとこだま普通車指定席プランを利用すれば5,400円と、かなりお得になります。
ひと昔前は金券ショップの価格が安かったため、この5,400円以下でも手に入りましたが、最近5,400円をきるのを見かけないこと、また浜松も同様になかなかぷらっとこだまよりも安いのを見かけないので、安さでいえば、やはりぷらっとこだまが一番よさそうな感じですね。
東京ー名古屋
続いて東京=名古屋間を考察していきたいと思います。
東京と名古屋の所要時間は、のぞみだと1時間40分なのに対し、こだまの場合は2時間40分かかります。その差は1時間です。
きっぷ | 価格 |
---|---|
指定席通常価格(のぞみ) | 11,300円 |
指定席通常価格(ひかり・こだま) | 11,090円 |
自由席通常価格 | 10,560円 |
EX早特21ワイド | 9,800円 |
新幹線回数券(金券ショップばら売り)自由席 | 9,800円~ |
EXこだまグリーン早特 | 9,170円 |
ぷらっとこだま | 8,810円 |
金券ショップでも9,500円を切っているのは私はみたことはないので、ぷらっとこだまは1,000円ほどは安いことになります。
名古屋までの利用判断は「プラス1時間」というのをどこまで許容できるかですよね。2時間40分というのは、のぞみだと東京と大阪を結ぶ時間です。その時間で名古屋まで行くことができて、8,500円ビール付きというのを許容さえできれば、比較的お得で使う価値はあるかな、と思います。
また、東京=名古屋間は、ぷらっとこだま通常料金にたった360追加した9,170円で、「EXこだまグリーン早得」を利用することが可能です(ドリンクは取り上げらますがw)。事前予約が必須ですが、グリーン車利用がお得なのです。
東海道新幹線のグリーン車は正直そこまで豪華か?と思うところはありますが、360円ですからアトラクションだと思って乗ってしまうのはいいと思います。
東京ー京都・大阪
最後に京都、大阪について考察したいと思います。
のぞみでの所用時間は京都まで2時間15分、大阪まで2時間30分です。一方、こだまでの所用時間は京都まで3時間40分、大阪まで4時間弱です。また、新大阪までいくこだまは1時間に1本となっていることにも注意が必要です。
東京・品川=京都 | 東京・品川=新大阪 | |
通常料金(指定) | 14,170円 | 14,720円 |
通常料金(自由) | 13,320円 | 14,180円 |
金券ショップ(自由) | 12,920円~ | 13,000円~ |
ぷらっとこだま(指定) | 10,790円 | 11,210円 |
値段だけをみると、とても魅力的です。新大阪まで11,210円ですから、通常よりも3割くらい安いということになります。
また、京都や大阪の場合は、東京・品川に比べ前後にJR在来線を使う機会が少ないと思うので、特定区間の在来線部分もあまり考慮しなくていいと思います。
ただ、個人的に、新幹線で4時間というのは「ちょっとないなぁ」という感じです。のぞみなら4時間で広島行けますし、東北新幹線のはやぶさなら函館までいけちゃいます。
いくら安いからって、時間かけすぎじゃないのかなって思っちゃうんですよ。もちろん、ほどほどに安くてほどほどに速いので、時間に余裕があって新幹線にこだわりたい!という人には向いていると思います。
また、東阪間の移動であれば、そもそも新幹線ではなく飛行機という選択肢もあるでしよう。羽田空港と伊丹空港の所要時間は60分で、それぞれの空港から中心部の時間までと空港チェックインの時間を考慮すると、所要時間はほぼ同等でしょう。
飛行機は新幹線と違い、早い時間に購入すれば安くチケットが購入できます。時間帯によっては羽田=伊丹で7,000円台から設定がありますので、のぞみとほぼ同じ時間で、ぷらっとこだまよりも早く移動できることになります。
成田空港と関西国際空港を結ぶLCCもあり、こちらはより安い場合が多いですが、成田=都心と関空=大阪中心部の移動時間を考えると4時間以上かかりますし、それぞれの空港と中心部の交通費も考えると、お得度が下がってしまうのであまりお勧めできないですね…。
なので私は東阪間でぷらっとこだまを使うのは、そんなお得ではないなぁと思っています。さすがに4時間は長すぎなので、飛行機とのぞみ、安いほうを選んでしまいますね…。
結論!ぷらっとこだまはお得なのか?
個人的には、東京発なら名古屋までであれば利用価値があると思います。ただ、名古屋に関しては私ならグリーン車が利用可能なEXこだまグリーン早特3を使います。
京都、大阪は安いけど所要時間が気になるのでパスです。
あと紹介しきれなかったのですが、名古屋=京都・新大阪も利用価値があります。
もちろん、京都や大阪に移動する際、多少時間がかかっても安く新幹線で移動したいとか、飛行機が苦手だとか、理由があれば大いに使う価値があると思います。
なお、東京から大阪への移動は飛行機という選択肢もありますし、マイルを貯めれば無料で東京と大阪の行き来だって可能です。簡単に、とは言いませんが、ひと手間かければ年間20万マイル、つまり東京・大阪を20往復くらいのマイルはためることが可能です。
そのやり方は以下の記事に書いていますので、興味のある方はぜひご覧ください。