離島の路線維持が課題となっている中で前々から計画のあった、地域航空会社の連携。かなり前から話はでていたのですが、足掛け5年、ついに九州では話がまとまり、JALとANAの両社にコードシェアをする取り組みが開始されることになりました。
これにより、JAL便でオリエンタルエアブリッジの路線が、ANA便で天草エアラインや日本エアコミューターの路線が発券できるようになります。また、これにより有償の航空券のみならず特典航空券の発券も可能となります。ANAマイルで鹿児島の離島へ、JALマイルで長崎の離島に行くことができるので、旅の計画も広がっていくのではないかなと思います。
離島路線の持続性問題
経営基盤の弱い離島路線を運航する航空会社をいかに持続可能な交通インフラにするかという問題は、少なくとも2017年度からは国交省内で議論されていました。離島の生活維持のために路線は必要ですが、そう稼げる路線でもないのでなかなか大変な問題です。
その議論の結果、2018年の3月に国交省の検討会が、以下の5社について、「合併か統合を模索すべき」という提言がなされました。
- 北海道エアシステム(北海道・JAL系)
- ANAウイングス(北海道/九州・ANA系)
- 天草エアライン(九州・JAL系)
- オリエンタルエアブリッジ(九州・ANA系)
- 日本エアコミューター(九州・JAL系)
合併か統合を模索すべきってなかなか強烈な提言ですよね。実際には合併はせず、協同という選択を進めていくのですが。
この提言を受けて、九州の3社は2019年度から国や自治体、JAL、ANAと地域航空会社で様々な検討をするとともに、共同プロモーションなどを実施してきました。機材もオリエンタルのみボンバルディアを使っていますが、これもATR42,72で統一し、協同整備などを行っていく予定です。
そして、2022年10月から、ANA、JALと天草エアライン(AMX)、オリエンタルエアブリッジ(ORC)、日本エアコミューター(JAC)の5社で共同運航を開始することになりました。
相互コードシェアへ
現在、ANAはORCと、JALはJAC・AMXとそれぞれ共同運航を実施していますが、今後ANAとJALの垣根を越えた連携、コードシェアがなされることになります。
2022年の冬ダイヤからは、ORCにANAだけでなくJALの便名がついて、JALのサイトで福岡までJAL、福岡からORCを利用する五島列島までのチケットが購入できたり、JACにANA便名がついて、ANAのサイトで鹿児島までANA、鹿児島からJACを利用する屋久島や種子島、奄美群島などへのチケットが購入可能になります。
また、当然便名がついているのでマイルの積算も可能になるというわけです。これは、JALやANAのどちらかに重点的に乗る方にとっては非常にうれしい話ではないでしょうか。ANA派の方が奄美にはちょっと行きにくかったですが気軽に行けますし、JAL派の方が長崎の離島に行くのも同様です。
ただ、別系列コードシェア(ANAとJAC、AMXやJALとORC)の場合、チケット購入時に座席指定ができなかったり、スルーチェックインができないため長崎や鹿児島で再度チェックインが必要だったりする点には注意が必要です。
特に座席指定が当日にしかできないというのは、家族・グループ旅行では当日いきなりバラバラになるリスクもあるので、ちょっと大変そうです。まぁ離島便なので短時間だからいいのかもしれませんが…。
まあここはそれぞれJAL系、ANA系とシステムが異なるので仕方がない部分ですね。
3社が運行する路線と便数はこのようになっています。これらの便がコードシェアの対象となっています。けっこう路線や本数があるものなんですね。
特典航空券はどうなる?
コードシェアの開始により、特典航空券も同様に発券することが可能となります。ただ、コードシェアなのでいろいろとルールが異なるので、少しまとめておきます。
JALマイルを使ったORC運航便
JALマイルを使って6,000マイルで対馬・壱岐・後藤福江に行くことが可能となります。あくまで福岡、長崎からの必要マイル数がこれなので、各地から長崎、福岡に行くには別途マイルが必要になります(JALは沖縄離島ですら乗り継ぎマイルの設定がない…)
で、有償の航空券はWebで発券できるようになるのですが、特典航空券についてはWebでは発券できず、電話発券になります。これはなかなかハードルが高いですし、事前に空席状況の確認もできませんから、なかなか大変にはなりそうですね…。
ANAマイルを使ったJAC、AMX運航便
ANAマイルを使ってJACやAMXを使う場合の必要マイル数や発券方法については、現時点で公表されていません。こちらは公表され次第更新したいと思います。
必要マイル数は、距離制が適用されるためローシーズンで5,000マイル、レギュラーシーズンで6,000マイル、ハイシーズンで7,000マイルとなるでしょう。
保有ステータスは活用できる?
ANAやJALのステータスホルダーが、別系列コードシェアを利用する場合、ステータスサービスの取り扱いはどうなるのでしょうか。
これですが、原則として発券側(便名側)のステータスが利用可能となります。例えばJALのステータスホルダーが福岡から五島福江にORCいく場合なんかも、JAL便で発券していればステータスが利用可能となります。
具体のサービスでちょっと厄介なのが、優先チェックインや保安検査については、運行会社側のサービスを利用しつつ、ラウンジは便名側(ステータス側)のラウンジを利用することになります。
上の例でみていくと、福岡から五島福江まで、JGC保有者がJAL便として航空券を持っている場合は、
- ANAのカウンターでチェックインをする(Webチェックイン不可。ANA PREMIUMチェックインカウンター利用可能)
- ANAの優先レーンを利用(チェックイン時にJAL側のステータスカード提示)
- ラウンジはサクララウンジを利用
となります。ANAのPREMIUM専用検査場を通過するのにJALのステータスカードを提示するなんてちょっと気持ち悪いですね。というか運用開始最初は現場混乱しそう。
同様にANA便で奄美路線を予約したときは、
鹿児島空港でチェックインする際はJAL(JAC)カウンターで行い、使うラウンジはANAラウンジ、ということになります。
まとめ
九州でJALとANAの両社にコードシェアをする取り組みが開始され、JAL便でオリエンタルエアブリッジの路線が、ANA便で天草エアラインや日本エアコミューターの路線が発券できるようになります。
ANAマイルで鹿児島の離島へ、JALマイルで長崎の離島に行くことができるので、旅の計画も広がっていくのではないかなと思います。また、離島区間でのステータス利用も可能なので、快適な旅行をすることができそうです。
一方で座席指定が当日までできないのは家族旅行にはしんどい(機材が小さいのでコントロールもきかない)部分があったりとか、特典航空券は電話発券が必要だったり、当日カウンターにチェックインしにいかないといけない等、使い勝手には少し問題もありそうです。この点はいずれ改善されるといいですね。
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