JR四国ではいくつか観光特急が運行されいていますが、その中でも特に人気があるのが、松山から伊予灘を通って大洲・八幡浜へ向かう「伊予灘ものがたり」です。
列車の中から望む伊予灘の絶景や車内で提供される食事など、どれをとっても素晴らしい観光特急で、四国のみならず全国の中でもトップクラスの観光特急だと思います。
今回、そんな「伊予灘ものがたり」にようやく乗車することができましたので、概要と乗車レポをお伝えしようと思います。
目次
特急「伊予灘ものがたり」とは
特急「伊予灘ものがたり」は、JR予讃線の松山と伊予大洲・八幡浜の間を週末を中心に2014年から1日2往復している観光列車です。
車窓の景色がよく、車両の素敵さや食事のおいしさなどもあり、日本でも有数の人気観光特急です。
伊予灘ものがたりは1日2往復、計4回運転されますが、1号、2号…ではなく、それぞれにストーリーをもたせ、「大洲編」、「双海編」、「八幡浜編」、「道後編」と名付けられています。
なので、同じ「伊予灘ものがたり」であっても、4つの列車それぞれ景色が異なり、車内で提供される食事も異なります。
列車は風光明媚な伊予灘の海岸線を走り、青春18きっぷのポスターなどでも有名な絶景の駅「下灘駅」で10分ほど停車します。ぽつんとおかれたベンチや無人の駅舎など、フォトジェニックな場所としても人気です。なかなか下灘駅に停車する列車は少ないので、伊予灘ものがたりで訪れることができるのは便利でもあります。
乗車には特急グリーン券が必要
現在の伊予灘ものがたりは全席グリーン車指定席の特急ですので、乗車券のほかに特急券とグリーン券が必要です。
松山~伊予大洲:3,670円(運賃970円 特急料金1,200円 グリーン料金1,500円)
松山~八幡浜:4,000円(運賃1300円 特急料金1,200円 グリーン料金1,500円)
そのため料金は全国の他の観光特急よりも高く、松山~伊予大洲では片道3,670円、松山~八幡浜では片道4,000円かかります。ただ、個人的にはそれだけの価値のある列車だと、乗車して改めて思っています。
伊予灘ものがたりにお得に乗車できる割引きっぷとかは特にないのですが、JR四国が誕生日月に限り3日間乗り放題になる「バースデイきっぷ」というきっぷがありまして、これのグリーン車用が13,200円ほどで購入することができ、このきっぷを使えば、追加料金不要となります(予約は必要です)。
仮に松山~八幡浜を伊予灘ものがたりで往復すればそれだけで8,000円かかりますので、誕生月に伊予灘ものがたりに乗りに行くというのもアリだと思います。
「伊予灘ものがたり」使用車両
伊予灘ものがたり使用されている特注列車がこちらになります。
現在は3両編成で運行されており、1号車「茜の章」は、伊予灘を染めてゆく夕焼け空を思わせる茜色の車両です。2号車「黄金の章」は、沿線に降りそそぐ太陽や、愛媛の名産であるみずみずしい柑橘をイメージした黄金色の車両です。
また、2022年にリニューアルしてからは、3号車に貸切車両の「陽華の章」が連結されています。
車両の中は後で詳しく紹介しますが、通常の特急のように横4列の座席となっているだけではなく、海側はカウンター席があって正面に海を見ることができたり、山側の対面席も海に向けて座席がやや海側に設置されていたりして、展望を楽しむことができる作りになっています。
また、伊予灘ものがたりは「オール愛媛」にこだわっており、料理のほか、食器やディスプレイなど、細部まで愛媛にこだわっています。
「伊予灘ものがたり」の運行日
「伊予灘ものがたり」は原則として、(金・)土・日曜日限定の運行となっています。一部の九州なんかの観光特急は地元の重要な交通手段としての役割もあるため毎日運行していますが、四国の観光特急は、全車両グリーン車で観光に特化しているため、観光客の多い土日限定となっています。
- 運転日はこちら
どうしても土日専用列車だとサービス業などで土日休めない人は乗れないので残念だなぁと思います。夏休みでも毎日運転とならず週末限定でした。これはスケジュールを組む時にちょっと辛かったです…。
「伊予灘ものがたり」運行ダイヤ
伊予灘ものがたりは1日2往復の運行ですが、運行ダイヤは以下のとおりです。
松山駅 | 下灘駅 | 伊予大洲駅 | 八幡浜駅 | |
---|---|---|---|---|
大洲編 | 8:26発 | 9:15 頃着 | 10:28着 | – |
双海編 | 13:12着 | 12:00頃着 | 10:57発 | – |
八幡浜編 | 13:32発 | 14:15頃着 | 15:12着 | 15:50着 |
道後編 | 18:17着 | 17:20頃着 | 16:33発 | 16:14発 |
1日2往復、計4回運転されるのですが、朝は松山から伊予大洲に「大洲編」が走り、そこから折り返しで「双海編」が運行されます。
午後は「八幡浜編」として、松山から伊予大洲を抜けて八幡浜まで向かい、帰りは夕日を楽しみながら松山に18時すぎに戻ってくるという運行スケジュールになっています。
単純往復だと現地での観光時間がうまく取れないので、観光も組み入れたい人は、片道は松山と宇和島を結び、1時間に1本設定のある特急宇和海を使うとよさそうです。
食事券は4日前までに予約が必要
伊予灘ものがたりでは、地元愛媛のシェフが監修し、愛媛の食材をふんだんに使用した食事が提供されるのですが、これは事前予約制で、別途注文をする必要があります。
時間帯にあわせ、大洲編であれば朝食(3,000円)、双海編と八幡浜編であれば昼食(5,500円)、道後編であればデザート(3,000円)になっています。
当日車内でもドリンクやおつまみは購入できますが、軽食などの販売はありません。また伊予灘ものがたりは水、お茶以外の飲食物の持ち込みが禁止されているので、駅弁などを車内で食べることはできません。
せっかく伊予灘ものがたりに乗るのですから、食事はぜひ注文すべきだと個人的には思います。
なので、伊予灘ものがたりの乗車券を確保しただけで満足せず、食事券の手配も忘れずに行いましょう。
食事券の発売箇所は以下のとおりです。
購入場所 | 決済方法 | 受付日 |
---|---|---|
JR西日本・JR四国 みどりの窓口 | 現金・クレジット | 乗車日の1ヶ月前から4日前まで |
JR四国 旅の予約センター(TEL087-825-1662) | 現金書留、振込 | 乗車日の1ヶ月前から10日前まで |
JR四国ツアー | クレジット、コンビニ決済 | 乗車日の1ヶ月前から10日前まで |
せとうち観光ナビ「setowa」 | クレジット | 乗車日の1ヶ月前から4日前まで |
JR西日本管内や四国管内の方であれば駅の窓口などで購入することができますが、それ以外の方であれば、せとうち観光ナビ「setowa」から購入するのが一番早そうです。
実際の乗車レポ
2022年8月、私もついに念願かなって伊予灘ものがたりに乗車してきましたので、その様子をレポしたいと思います。
今回私が乗車したのは、朝に松山から伊予大洲に向かう「大洲編」です。出発が朝8時すぎと非常に早くまだ少し眠い中、出発駅の松山駅にやってきました。このときはまだ天気が曇っていて、景色を楽しむことは難しいかな…と思っていたのでした。
人口50万を擁する四国最大都市・松山市の駅としては少し活気に欠けるような感じもしますが、現在高架工事中で工事が終わればきっときれいな駅になるんだと思います。
伊予灘ものがたり・大洲編の出発時間は8:24。8:10発の特急が出発したあとに1番線に入線してきました。人気の観光列車ということもあり、多くの方が写真を撮っています。
今回、私が予約した2号車に乗車しました。明るくモダンなインテリア調になっています。これが鉄道の車内なのか?というくらい、素敵な空間になっています。
今回、私は一人旅で訪れていますので、指定席予約の際に窓側のカウンタータイプの席を予約しました。海側の全席が海に面した回転椅子になっています。なかなか列車で窓側に座席が向いている席ってないので新鮮ですよね。このあと、景色のよい予讃線を存分に楽しめそうです。
山側には二人かけのテーブル席です。海側の景色がみやすいよう、少し高いところに椅子と机がおかれ、また座席は少し海側にむいています。これならテーブル席からも景色が楽しめそうです。
車両の間には、砥部焼の洗面台など、地元愛媛らしさがでています。その横には乗車記念スタンプなどがあります。
一号車の座席はこんな感じで、おおむね二号車と同じ。車内の色合いが異なり、シックな感じになっています。あとは4人掛けのテーブルがあることが異なる点でしょうか。
さぁ出発
8:24、定刻に伊予灘ものがたりの大洲編が出発しました。わずか60キロを2時間かけて進むのですから、とってもゆっくり走り出します。
まず見えてくるのがぼっちゃんスタジアム。野球を愛した明治の歌人・正岡子規は野球殿堂入りもしているんです。ちなみにベースボールを野球と訳したのは正岡子規というのは誤りです(どうでもいい話)
伊予市駅を過ぎると街中を離れ、景色はだんだんのどかになっていきます。予讃線は伊那灘沿いに走る海線と、内子を経由するショートカットの山線に分かれます。ここから、伊予灘ものがたりは風光明媚な伊予灘の海岸線に向かって行きます。
朝食を楽しむ
このころになって、事前に予約していた朝食のサービス(3,000円)が始まりました。
食事は時期や便によっても異なります。私は朝イチの大洲編でしたので朝食ですが、昼間の便であれば昼食になり、夕方の便ならおやつのような形になります。
この日の朝食、まずは冷製料理とポタージュがでてきました。冷製料理は野菜中心のメニューで、暑い夏には気持ちのよい、さっぱりとしていてどれもおいしかったです。また、ポタージュもとうもろこしの濃厚な味がおいしかったですね。
メイン料理はチキンカレーです。野菜がしっかりと煮込んであり、ピリッとしているもののバターカレーなのでそこまで辛すぎることもなく、おいしくいただくことができました。また、一緒に提供されたパンもおいしかったです。
質も量も文句なしの朝食を楽しむことができました。特別な空間込みということであれば、3,000円はそう高くないかなと思います。
食事をしていると遠くに伊予灘を眺めることができました。これから海沿いへ進路をとっていきます。
といっても海に出るのはもう少し先。車内にあるモニターは車両先端のカメラをうつしていますが、しばらく木の中を突っ切っていきます。
松山を出発して30分くらいすると、海が見えてきます。
天気がいいとみえるといわれていた、山口県の屋代島のほうまでみることができました。朝の天気から絶望感しかなかったですが、中国地方が望めるくらいまで天気がよくなって本当によかったです。
下灘駅到着
松山を出発してから約50分で、途中、唯一停車する下灘駅に到着します。10分ほど停車時間があるのでせっかくなので降りてみましょう。
先頭で写真撮影も可能です。
奇跡的にも雲がほとんど消えて快晴となったので、青空と茜色の車体が鮮やかなコントラストを描いています。下灘駅はとても海が近い駅で、左側にみえる国道が整備されるまではほんとうに海のすぐ前にある駅だったようです。今でも北陸本線の青梅川駅になどとともに、海に一番近い駅の一つといえるでしょう。
駅のホームにはぽつんとベンチがおかれており、その横にある縦文字の「しもなだ」というプレートのノスタルジックさとあわせて映えます。その後ろに青い空、海、そして伊予灘ものがたりの車体というコントラストがあって本当に美しい。この空間はとっても贅沢でした。
伊予灘ものがたりで訪れると人が多いのでそこまでではないのですが、普通列車でここに来ると駅のホームだとあることを忘れてしまいそうです。私は以前、下灘駅約20年前に訪れたことがあり、この20年で世の中はいろいろ大きく変わりましたが、この景色は本当に変わってない。
途中下車で乗り遅れないように注意喚起がされます。最初、本当に乗り遅れる人なんているのかよと思いましたが、翌日乗ったタクシーの運転手さんが乗り遅れたとのこと笑。だから必死にアナウンスしてるんですねー。
駅舎もノスタルジックな感じを残しています。人が多かったので写真を撮らなかったのですが、駅舎の中から外をみる光景もまた美しいんですよ。↓みたいなk
思わず降りてしまう、という経験をしたことがありますか。【1999年 冬/予讃線:下灘駅】 pic.twitter.com/dQbrqNKgmF
— 青春18きっぷポスター&コピーbot (@18Ticket_PRbot) August 2, 2015
下灘駅~伊予大洲駅へ
名残惜しいですが、下灘駅での10分ほどの停車時間を終えると、列車は伊予大洲に向けて向かっていきます。私は特に思い入れのある駅だったのでもう少しいたかったですが、それはまた普通列車でやってこようと思います…。
さて、食事はすでにすませていましたが、車内では事前にオーダーした食事以外にもドリンクやデザートが販売されています。ビールやカクテルから、日本酒飲み比べまで用意されています。もちろんノンアルドリンクもありますし、スイーツなども販売しています。
今回私は季節のカクテル「ひまわり」を買ってみました。
パイナップルベースのすっきりしたカクテルでとても美味しかったです。晴れた伊予灘の美しい海を見ながら飲む昼酒は最強です。
そして喜多灘の駅を過ぎると伊予市から大洲市に入っていきます。旅も後半に入っていきます。
このころ、アテンダントさんが乗車記念のパネルをもって車内を回ってきてくれました。私は一人なので撮りませんでしたが、これもまた旅の思い出になるのではないでしょうか。
伊予長洲駅をすぎると、線路は海沿いから別れを告げ、大洲に向けて肱川沿いに進路をとっていきます。少し雲もでてきましたが、雲がもくもくしている川の景色ももまた美しいです。
海側を離れて肱川沿いに大洲を目指す沿線の途中では、このように多くの方がお見送りしてくれます。地域の中に伊予灘ものがたりが着実に浸透していることを感じさせてくれます。コロナで人と人とのつながりが薄くなっている中、車両ごし、マスク越しとはいえ、暖かい手を振ってくれるのは本当にうれしいです。
そして、松山から出発して2時間後、伊予大洲に到着です。あっという間の楽しい2時間でした。
伊予大洲観光をちょっとだけ紹介
せっかく大洲まで来ましたので、「伊予の小京都」とも言われる観光の紹介も少しだけしておこうと思います。
観光の中心部となるエリアは駅からおよそ1.5キロ離れています。なので駅に着いたらまずやること、それはタクシーの確保です。そんなに多く駅にタクシーがいないこと、そしてバスが土日運休が多くアテにならないことから、歩けない距離ではないがタクシー使った方が楽です。伊予灘ものがたりの乗客が一瞬にしてライバルになります(笑)
なお駅横の観光案内所でレンタサイクルがあるので、体力に自信のある方はこちらを利用してもいいかもしれません。戻りのタクシー確保も大変なので。
まずは肱川沿いにある大洲城。小早川隆景が伊予を平定したのち、江戸時代に整備された城です。
近くには松山城と宇和島城という、江戸時代から残っている天守をもつお城(現存12天守)がありますのでこれらに比べると見劣りしますが、こちらも天守が復元されています。復元されたのが平成に入ってからですが、かなり精密な復元がなされており、エレベーターや冷房など最近の城にある設備がありません(笑)
内部は急な階段があるのですが、城の上からながめる肱川の眺めは美しいのでぜひのぼってもらいたいですね。
あと、東京ラブストーリーのロケ地としても大洲は有名です。カンチのふるさとが愛媛という設定ですが、大洲神社、おはなはん通りなど多くのシーンが最終回で使われています(学校は久万高原なのでここにはないです)ここは往年のファンにはたまらないエリアですね。
このようにロケ地には東京ラブストーリーのみならず、他のドラマなども含めて案内があったりします。
だいたいこの辺を回って2時間くらいあれば十分かと思います。帰りの列車が12:40発の松山行き特急があるので、それを目安に戻ってくればいいと思います。
まとめ
数ある全国の観光特急の中でも特に評判の良い「伊予灘ものがたり」を紹介するとともに、2022年にリニューアルした車両に乗車してきました。
評判通りの車内、車窓、食事、どれをとっても満足できました。下灘駅はとても美しかったですね。曇り予報、朝は大雨でしたが天気がもって本当によかった!
ぜひ四国旅行の際には乗ってみてほしいし、むしろこれ乗るために松山へ行かれてみてはいかがでしょうか!