2020年春から、航路見直しなどに伴い羽田空港国際線の発着回数が増加します。
すでにアメリカ向けには24便の増加が発表かれていましたが、今回、全50便の配分が決定し、就航国と日系2社の枠の配分が決まりました。
そこで、今日は就航国や想定される就航都市などについて解説していきたいと思います。
目次
2020年春から羽田空港の機能強化
羽田空港は、2020年から国際線の発着回数を、新たな飛行経路の運用を開始することにより、離発着回数を増やすことによって年間6万回から9.9万回に増加することになります。
いわゆる、「都心上空ルート」とも呼ばれるルートで、今まで羽田空港に離発着する便は、東京湾方面に流れてたものが、北側の東京都心も通過させることにより、効率的に飛行機を運用するということです。
これにより発着回数の増加が見込まれ、今回増加する発着に関しては、すべて国際線に割り振ることになっています。
時間帯が夕方を中心に増枠が可能となり、今回、国際線の増加便数は、1日あたりに直すと50便となります。けっこうインパクトのある数字ですよね。
2020年春からの就航国と便数が決定
この貴重な羽田空港の50枠の取り合いが国際間で行われていたんですが、これがついに9月2日に決定・公表されました。
国土交通省が発表した公表資料はこちら
すでに2月の段階で、アメリカへはこのうち日系12便、アメリカ系12便の合わせて24便の確保が決定しており、さらにアメリカ系の12便はすでにアメリカ側の就航空港まで決まっています(のちほど紹介します)
このほかの26便について、就航する国が決定しましたので紹介したいと思います。
- アメリカ(24便)
- 中国(8便)
- ロシア(4便)
- オーストラリア(4便)
- インド(2便+別途深夜早朝便2便)
- イタリア(2便)
- トルコ(2便)
- フィンランド(2便)
- スカンジナビア(2便)
このような割り振りになりました。これにより、太字で記したロシア、インド、イタリア、トルコ、フィンランド、スカンジナビア諸国と羽田空港の間で新たに直行便が就航されることになります。
今回の割り振りで個人的には意外なのは、東南アジアに割り振りがゼロだったことです。これは、新規の国(特に欧米)に優先的に枠を与えるとともに、東南アジアと北米をつなぐハブとしての立場もある成田空港への配慮も一定程度あるのではないかなと勝手に推察しています。
これにより東南アジア路線が成田に残りますから、成田からアメリカ路線が撤退しにくくなったなぁと思います。
あと、ヨーロッパですとオランダなども申請したようですが落選しました。基本は日本と相手国が同数の便数としますが、オランダに関しては日系(就航実績のあるJAL)が飛ばす気がなかったということでしょう。そもそも、深夜早朝便の枠がオランダはあったと思いますが、それすら活用されていませんのでね…。
日系2社の配分はJALが11.5枠、ANAが13.5枠を確保
日系に与えられた25枠について、JALとANAの配分がどうなるのかという問題もありました。
前回、2014年に羽田空港の発着枠を設定した際はANAが11に対してJALが5(別途アメリカが3:2)というかなり偏った配分になりましたが、今回は就航実績を加味してJALが11.5対ANA13.5と、予想の範囲内(8月の日経新聞のリークどおり)となりました。
まあ想定どおりでしょう。若干ANAが多くなるのはしょうがないとして、露骨な配分にならなかったのは、JALファンとしてはうれしい限りです。
それでは、それぞれの路線の配分をみていきたいと思います。
アメリカ路線
- JAL:6枠(既存2枠)
- ANA:6枠(既存3枠+深夜)
- デルタ航空:5枠(既存2枠)
- ユナイテッド航空:4枠(既存1枠)
- アメリカン航空:2枠(既存1枠)
- ハワイアン航空:1枠(既存1枠+深夜)
半分近い24枠を配分されたアメリカは、すでにアメリカ12枠の路線が決まっています。
デルタ航空はシアトル、デトロイト、アトランタ、ポートランド、ホノルルの5枠を新規に獲得し、既存のロサンゼルス、ミネアポリスの2枠を含めて7路線をもつことになります。また、これによりデルタ航空は成田空港からの撤退を表明しています。
ユナイテッド航空はニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ワシントンの4路線を獲得し、既存のサンフランシスコを含めて5路線となります。シカゴとワシントンは成田からの移管を明言していますが、ニューヨークとロサンゼルスについては、既存の成田便は残るほか、現在就航しているほかの都市も成田便を維持します。
アメリカン航空はダラスフォートワースとロサンゼルスを獲得し、既存のロサンゼルス便と合わせて2路線3便を運航することになります。アメリカ系4社の中で唯一成田の運用については現時点で発表はありませんが、きっと空いた成田空港の枠でラスベガスに飛ばしてくれるものと思っています。俺は信じてるよ!
ハワイアン航空は配分に納得せずにアメリカ運輸省に意見書を出してゴネましたがひっくり返らず、ホノルルを1便獲得で決定です。なお、成田空港からの1便についても残すことになり、ハワイアン航空としては純増という形になります。
このように、アメリカ側が配分決まっている中、日系はJALもANAも6便を確保しました。日系がどこに飛ぶかは難しいところですが、JALに関してはある程度の予想は可能ですね。
- 羽田=ロサンゼルス
- 羽田=シカゴ
- 羽田=ダラス・フォートワース
- 羽田=ホノルル
この4路線は確実でしょう。現在羽田線はサンフランシスコとニューヨークの2路線をもっているJALですが、ANAがすでにもっているロサンゼルスとシカゴは確定でしょう。また、提携するアメリカン航空が2枠申請して1枠しか確保できなかったダラス・フォートワースと、ニューヨーク線を移管するために泣く泣く成田空港に戻したホノルル線の4路線は確実に羽田に移ると思われます。
さらにプラス2路線ということであれば、ロサンゼルスやホノルルの2本目の移行、あるいはシアトル、ボストンあたりでしょうか…。はたまた、いきなり新路線を羽田で展開するという手もありといえばありですが…。ラスベガス…(しつこい)
また、あいた成田空港の枠では、マイアミ線などの就航がうわさされています。マイアミ線があると、カリブ海リゾートや中南米への乗り継ぎにも非常に便利になりますので、こちらにも期待ですね。
中国路線
- JAL:2枠
- ANA:2枠
- 中国系:4枠
もともと「石垣ルール」時代から昼間の羽田空港に就航していた中国路線。中国についてはJAL、ANAともさらに2便増となりました。なんだかんだいってもビジネス需要が底堅い中国ですから、都市部を中心に増便が行われるんでしょうね。
現在、羽田から日系や中国系は北京、上海、広州に就航していますが(深夜早朝便は除く)、新たな都市に就航するのかそれとも既存路線の強化に使うのか、各社の枠の使い方が見どころですね。
今回、北京や上海の空港利用制限が緩和されたので、これらの空港(北京はイスタンブールよりもさらに大きい新空港ができますし!)へも比較的就航がしやすいとは思うのですが、一方で発展著しい都市に先に就航して先行者利益をかっさらうという方法もありますし(私は中国事情に疎いので具体的な都市名が言えないのですが・・・・)と路線が読めないです。
ロシア便
- JAL:1枠
- ANA:1枠
- ロシア系:2枠
羽田から大国ロシアへの枠が今回新たに設定されました。
JAL、ANAともふつうに考えればモスクワ行きに使うでしょう。それ以外に現時点で使い道はないでしょうし。さすがにモスクワ便を使わずに、両社が新規就航を表明しているウラジオストクに使うことはないでしょうね…。
それよりも気になるのがロシア側。1枠はアエロフロートがモスクワ便に使うでしょうが、もう1枠の使い道。モスクワ以外となると、現在成田に就航しているS7航空のウラジオストク便を羽田にもってくるのでしょうか?
そうなると、日本側からすると時間があまりよくないS7航空の現行ダイヤでも、JALやANAとのすみわけにもなりそうですね。
オーストラリア便
- JAL:1枠(シドニー)
- ANA:1枠
- カンタス:1枠
- ヴァージンオーストラリア:1枠【羽田初就航】(ブリスベン)
オーストラリア行きも日系1便ずつ確保です。JALはシドニーでもう決定でしょう。問題はすでにシドニー線を就航しているANA。パースではいささかインパクトが弱いので、メルボルンなどの新規路線就航があるかもしれませんね。
オーストラリア側は、カンタス航空が1枠、ヴァージンオーストラリアが1枠の予定となります。オーストラリアの航空局や公正取引委員会の支持もありましたので、ほぼこれで確定でしょう。
ヴァージンオーストラリア航空は羽田=ブリスベンを希望していますのでこれが新規路線で確定、カンタス航空は、羽田=シドニーの増便か、羽田=メルボルンの開設のどちらかを選ぶことになりそうです。
インド線
- JAL:深夜0.5枠、昼0.5枠
- ANA:深夜0.5枠、昼0.5枠
- オーストラリア系:昼間1枠+深夜1枠
インド線は0.5枠+深夜という書かれ方をしていますが、日系のどちらかが昼間、どちらかが深夜ということになるでしょう。その点、インドのフラッグキャリアであるエアインディアがスターアライアンス所属であることから、ANAが昼間枠を持って行くと思われます。
この件について、2社とも離着陸のうち、どちらかを深夜早朝枠の時間帯、もう一方を昼間時間帯に使うのでは?というご指摘をいただきました。確かにそうかもしれませんね。
例えばJAL、ANAとも離陸が深夜(23時ころ)→インド早朝着、朝発→着陸が昼間(夕方)というダイヤになるかもしれません。今回、特に夕方を中心とした発着枠の拡大ですので。
どちらもすでに一定の実績のあるデリーを移管することになりそうですが、今後ますます期待できるインド=アメリカ(特に西海岸)の乗り継ぎ需要に備えて、成田発着の昼便を維持してダブルデイリーにするかもしれません。
インド側はエアインディアが2枠もっていくことでしょう。
イタリア路線
- ANA:1枠(ミラノ)
- アリタリア:1枠(ローマ)
ここからは日系は1枠勝負の世界です。まずはイタリア、ここは古くはJALがミラノ・ローマ両都市に長く就航していた路線で、ANAも就航実績がありますが、ANAがとりました。以前からANA幹部はイタリア就航を口にしていましたね。
一時期羽田からイタリアにJALがチャーターで飛ばしていたのでワンチャンあるかと思いましたが、今回国交省はコードシェアも重視したのでアリタリアとコードシェアしたANAになりました。
まず、アリタリア航空は、羽田=ローマ線の就航を発表しました。これは既存の成田=ローマ線を移管して運航するとのことです。
【ニュースソース】
ANAはおそらくビジネス需要もある程度あるミラノに就航するのでしょう。そして相互コードシェアをすることにより利便性を高めていくのではないでしょうか。
トルコ便
- ANA:1枠(イスタンブール)
- ターキッシュ:1枠(イスタンブール)
続いてトランジットとしてよく使われるトルコのイスタンブール。ここもANAがとりました。まぁ何もいわずとも、ANAはイスタンブール新規就航、トルコ航空は成田からイスタンブール線を移管という形になるでしょう。ただでさえANAが就航するので、成田に残すことはないかな?
フィンランド
- JAL:1枠(ヘルシンキ)
- フィンエアー:1枠(ヘルシンキ)
ヨーロッパの玄関地でもあるフィンランドのヘルシンキ。もうここはJALで確定ですね。ここはJALはまぁ移管でしょう。
一方フィンエアーはアジア拡大路線をとっており、羽田=ヘルシンキを羽田深夜発で運航するとともに、1日2便ある成田=ヘルシンキのうち1便を残してダブルトラックにすることになりました。
ひと昔前に比べて「ヨーロッパの入り口」としての地位があがってきたヘルシンキは、それくらい需要が底堅い路線です。イタリアやスペインに行く際にも使われること多いですしね。
スカンジナビア3国
- ANA:1枠
- スカンジナビア航空:1枠(コペンハーゲン)
ここは国を限定せずにスカンジナビア航空に1枠を与え、それに合わせてANAに1枠を与えた形です。とはいえ、航空協定もノルウェー、スウェーデン、デンマーク3国で日本と結んでいます。
スカンジナビア航空側は既存の成田=コペンハーゲンの移管を明言していますが、ANA側はせっかくなので目先を変えて、ストックホルムあたりに就航するかもしれませんね。
日系の成田便はどうなるのか?
今回、JALが11.5便、ANAが13.5便の枠が付与されるために、成田空港の機能低下の可能性が叫ばれています。実際、デルタ航空が撤退を表明したほか、一部の航空会社も通称「成田縛り」が完全崩壊することから、羽田枠をとれた航空会社は成田撤退を検討するでしょう。
羽田空港の国際化により就航する路線は、コードシェアでもなんでもいいから成田にも同一国への路線を残せという暗黙の了解。ヴァージンアトランティックの日本撤退により、ANAがロンドン線を成田に残せなくなり有名無実化。
これは私の完全な私見ですが、日系に関しては、羽田移管で成田の便数は減ることが想定されますが、それがまるまる成田の減便にはつながらないと私は期待しています。
最初に書きましたが、やはり成田の存在価値のうちの一つが、アジアとアメリカをつなぐことなんですね。それで、今回アジア便が羽田で新たに割り振られたのは中国だけですので、今後も成田空港の活用は必至です。さすがにJALのヘルシンキやシドニーなどは羽田と成田の両方から飛ばすほどの需要はないでしょうが、他の路線は大半が維持されるのではないかな、と思います。
まとめ
羽田空港の拡張に伴う割り振りが決まりました。あとは個別に就航する都市の調整がありますが、これらも早々に発表されると思います。
JALはアメリカ6か所(ロサンゼルス、ホノルル、シカゴなど)、中国2か所、モスクワ、シドニー、デリー、ヘルシンキ線が羽田から就航することになります。。
ANAはアメリカ6か所、中国2か所、モスクワ、豪州、デリー、ミラノ?、イスタンブール
東南アジアが追加ゼロというのは意外でしたが、それでも多くの都市と新規就航が生まれそうな感じになってきましたね。
あとは、チケットの発売時期が楽しみです。往々に、新規就航があると特典航空券も取りやすいので、そのときのためにマイルはきっちりためておきたいものですね。