空港の近い将来はこうなる!平成31年度国交省予算概算要求から航空行政に関する部分を解説します

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日本の航空行政を担う国土交通省が、平成31年度予算概算要求の内容を発表しました。

施策と予算はセットとなりますので、この概算要求資料を読めば、日本の航空行政が何を考え何をしたいのかがわかってきます。

そこで、今回はこの資料から、航空局に関する部分、とりわけ飛行機を利用する人に関わる部分についてピックアップして解説と自分なりの推察と意見を書けたらなと思います。

予算概算要求とは?

概算要求とは、毎年8月末に各府省が「次年度の予算これだけくれ!」というのを財務省に出すものです。このあと、財務省による査定を経て、クリスマス頃に次年度の予算の原案ができ、2〜3月で国会で審議され決定するものです。

なので、概算要求資料を読むと、各府省が来年度にやりたいこと、やろうとしていることが見えてくるんですね。

国交省の概算要求資料が公表

今回国交省は8月29日に概算要求の概要を公表しました。詳細は以下のページでご覧いただきます。

この資料、これ全部読むとけっこう大変ですよー。ついでに言うと、国交省のサイトってやたら重いので、ダウンロードにめっちゃ時間がかかるんです。

なので、全体を御覧いただきたい方は上記リンクからと思いますが、今回、私がそこから航空局に関する部分を中心に抜き出して少し解説もできればと思います。

航空局の概算要求は4,267億円

国交省の予算要求のうち、航空局に関する予算は、空港整備に関する特別会計が4,194億円、一般会計で73億円となっています。合計すると4,276億円となります。けっこうな予算規模ですね。

国交省航空局には様々な仕事があり、管制業務などにについても読んでいて面白いのですが、例えば高高度の管制を福岡に一本化するとかそういう話をしても、飛行機を利用する人からすれば、それで何が便利ななるの?というのがありますので、この記事では、飛行機に乗る人、旅行が好きな人、空港が好きな人に興味がありそうな部分をピックアップして書いてみたいと思います。特に空港部分について書ければと思います。。

羽田空港は都心上空ルートと第2ターミナルの国際線転用が目玉

羽田空港では、2020年に向けて離着陸の回数を増加させるために、都心上空も通るなど、飛行経路の見直しを行っています。現在、羽田空港の離着陸は、東京湾方面から出入りしていたんですが、都心の上空も活用することにより、より多くの飛行機の離発着ができるようにになります。

平成31年度は、飛行経路が変わることにより新たに必要となる航空保安施設、誘導路等の施設整備や、羽田空港のCIQ(税関・出入国・検疫施設のことです)施設整備、環境・落下物対策を実施するとともに、駐機場の整備、国際線・国内線地区を結ぶトンネルの整備、川崎市・羽田空港を結ぶ連絡道路の整備、滑走路等の耐震対策及び基本施設・航空保安施設等の老朽化に伴う更新・改良を実施するようです。けっこうもりだくさんですね。

このほか、PFI事業として、羽田空港第2ターミナルの一部を国際線に転用することも実施されます。なぜ第2ターミナルなのかというと、もともと第2ターミナルは、国際線にも活用できるよう出発階と到着階が別になっているんですね。JALが入る第1ターミナルは、出発と到着が同一階なので、国際線の転用が非常に難しい(できなくはないが大変)んです。

おそらくANAの国際線が第2ターミナルに移転し、国内線・国際線の乗り継ぎが同一ターミナルでできるようになります。

今回、第2ターミナルの南側の一部を国際線に転用することとし、これだとANAなど、第2ターミナルを利用している国内線のスポットが足りなくなるため、国内線東貨物地区に、新たに国内線の搭乗スポットを整備することになっています。第2ターミナルからバスで行くのでしょうかね。

補足
第2ターミナルへの国際線対応施設の整備に伴い「国際線ターミナル」を「第3ターミナル」に名称変更予定です。

成田空港は3本目の滑走路にめど

成田空港では、首都圏空港の機能強化に向けて、高速離脱誘導路の整備等により2020年までに空港処理能力を約4万回拡大する取組を進めています。

平成31年度予算では、東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたCIQエリアの機能向上のための施設整備をはじめ、庁舎耐震対策、航空保安施設の老朽化更新等を実施します。そのほか、空港の運営会社事業として、LCC専用の第3ターミナルの機能強化も予定されているようです。

また、これは来年度予算でどうこうするというわけではないのですが、成田空港にようやく3本目の滑走路ができるめどがたちました。平成30年3月に、滑走路の整備をはじめとする更なる機能強化について最終合意がされました。

場所はかなり離れた山の方になり、細かい場所は今後詰めていくことになるのですが、現状成田空港もパンパンな状態ですので、3本目の滑走路ができることはよいことだと思います。

もう一つの合意内容が深夜早朝の離着陸の規制緩和です。現在、成田空港は6時から22時までの運用が原則となっており、便数制限をかけたうえで23時までとなっています。これが、24時まで便数制限なしで離着陸することが可能となります。これは旅客便のみならず貨物便にも非常によいことだと思います。

伊丹空港・関西国際空港は目新しい事業なし

伊丹空港と関西国際空港については、特段目新しい内容はありません。淡々と航空保安施設の更新費用が計上されています。空港の運営自体は、関西エアポート株式会社が行っていますので、民間投資により設備は充実していくものと思われます。

おりしも、概算要求の締め切り直後に台風21号により、関西国際空港は大きな被害を受けてしまいました。高潮対策どうするんですかね?

中部空港はLCCターミナルが開業

中部空港は、平成31年度にLCC専用ターミナルの共用が開始されます。こちらの費用は運営会社の財源で賄われることになっています。

航空局からは、この新たなLCC専用ターミナルビルのCIQ施設を整備したり、航空機の安全な運航を確保するための航空保安施設の更新費用が計上されています。

福岡空港の第2滑走路建設

日本有数の混雑空港と化した福岡空港ですが、第2滑走路の建設に向けた費用が計上されています。さらに、財源確保のため、空港運営事業を民間に委託することになっています。空港で稼いでもらうということですね。

31年度には用地造成、滑走路・誘導路・エプロン新設、無線施設整備等を行うこととしており、現在のところ、第2滑走路の完成は2025年を予定しているようです。2本の滑走路が210メートルしか離れていないので、運用難しそうですが…。

那覇空港の第2滑走路は供用開始間近

こちらはついに第2滑走路の完成が近づいてきましたね。スクランブルも多く、「那覇空港混雑のため着陸が…」ってときはだいたいスクランブルがあるときですね。

31年度は最後の建設整備費用が計上されています。そのうえで、2020年3月には第2滑走路が供用開始される見込みです。これでスムーズな離着陸が可能になると思います。ちなみに上の写真の左側が瀬長島です。

離島路線の持続性問題

経営基盤の弱い離島路線を運航する航空会社をいかに持続可能な交通インフラにするかという問題があります。今年の3月に国交省の検討会が、以下の5社について、「合併か統合を模索すべき」という提言がなされました。個人的にはかなり乱暴な議論だとは思っていますが。

  • 北海道エアシステム(北海道・JAL系)
  • ANAウイングス(北海道/九州・ANA系)
  • 天草エアライン(九州・JAL系)
  • オリエンタルエアブリッジ(九州・ANA系)
  • 日本エアコミューター(九州・JAL系)

さすがに今回の予算要求の資料に「合併」という言葉はないのですが、整備業務の共同化により国内修理を可能とするために必要な体制の検討、系列を超えたコードシェアやそのために必要なシステム改修、協業による地域航空パイロットの安定的確保についての調査研究費用を要求しています。

災害対策や安全対策費用も計上

被災した熊本空港の復旧費用や、空港の耐震化対策や老朽化対策、はたまたオーバーラン対策などの費用も計上されています。このあたりもしっかりやっていただきたい部分ですよね。

特にオーバーラン対策は、29年度に対策の基準が強化されたので、RESAと呼ばれる滑走路端安全区域、いわばバッファの整備を進めるようです。

顔認証ゲートの運用開始と入国管理局の「庁」への格上げ

最後に法務省も関係のある出入国について触れておきます。

外国人旅行者の増加により、入管に負担がかかっていることから、日本人に対しては「顔認証ゲート」を利用した出入国審査を推進しています。現在、成田・羽田・関空・中部・福岡の各空港に配備されており、日本に帰国したときは、原則として顔認証ゲートに通されるようになりました。

これが、10月以降、順次出国時も顔認証ゲートを利用することになります。スケジュールは以下のとおりです。

  • 成田空港(第2・3ターミナル):10月上旬ころ
  • 成田空港(第1ターミナル):10月下旬ころ
  • 羽田空港:10月下旬ころ
  • 中部空港:11月上旬ころ
  • 関西空港:11月下旬ころ
  • 福岡空港:11月下旬ころ

また、平成31年から、法務省の入国管理局を「入国在留管理庁」に格上げする要求も出しています。

まとめ

国交省の概算要求資料から、来年以降の航空行政の展望をみてみました。羽田空港の再拡張や成田空港の第3ターミナルに向けた動きなど、興味深いものがありましたね。このほかにも、航空イノベーションの推進など、興味深い内容が含まれていたります。

もちろん無駄遣いはいけませんが、ぜひとも航空局には予算を確保してもらい、実現を図ってもらいたいものです

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