日本で最も混雑するといえば羽田空港。4本の滑走路から終日ひっきりなしに飛行機の離発着が行われています。
そんな羽田空港の発着枠は、どの航空会社も欲しいものです。
そんな中、羽田空港には、「発着枠コンテスト」というものがあり、航空会社に割り当てる枠とは別に、主に羽田と地方路線を結ぶ路線で、地域と航空会社の取り組みが素晴らしい路線に対し、別途の枠を設けています。
この羽田発着枠コンテストの結果が決まり、暫定ですが新規路線として羽田=下地島がスカイマークによって運航されることになりました。そのほかの結果も併せて紹介したいと思います。
羽田空港国内線の発着枠の割り振り
まず先に書きますが、ざっくりとした羽田空港国内線の枠の割り振り方を紹介しておきます。読み物的な感じですみません笑。
羽田空港と各地を結ぶ路線は、航空会社にとってはドル箱路線になりますから、どの航空会社も羽田空港の発着枠は欲しいものです。そのため、羽田空港の発着枠については、、朝・夜の比較的混雑していない時間帯(専門用語ですが「益外便益」って言います)を除いて、国が管理しています。
この発着枠は、JALグループに〇枠、ANAに〇枠、スカイマークに〇枠…という形で配分されるんですが、行先は特に指定されていません。これが国際線の発着枠と違うところです。
そのため、意外にも航空会社は需要などに応じて、柔軟に行先を決めることができるんです。例えば、夏になれ伊丹や福岡などのビジネス需要便や、そこそこの地方から少し捻出して沖縄便を増やして、冬になれば沖縄便を減らして戻すことなんかも可能です。
ただし、完全に自由に割振ができるわけではなくて、地域振興の役割もある航空路線ですから、規模の小さい・本数の少ない空港と羽田空港を結ぶ路線にはルールが設けられています。
具体的には、(航空会社をとわず)1日3便以下の路線で減便する場合、その分の発着枠は、新規就航路線か、1日3便以内の路線にしか利用できないというルールがあります(3便ルール)。
これは、地方路線を切り捨ててその分新千歳や福岡のような高需要路線に枠を突っ込むことを防ぐルールです。どうしても採算が取れずに地方路線を減便するなら、その枠は他の路線が少ない地方への増便という形で使いなさい、というものです。
また、羽田と地方を結ぶ便が1便しかない中で撤退する場合は、その枠は他に使うことができず、一度国交省に返して他に運航したい航空会社を募集するルール(1便ルール)があります。
羽田発着枠政策コンテストとは
羽田空港の発着路線ごとの便数については、意外にも航空会社の自主性にゆだねられている路線ですが、地域振興の観点から、地方の空港は羽田空港路線を増やして、もっと行き来を活発にして観光やビジネスに繋げたい!と思っているところも多いです。
そこで、国交省は「羽田発着枠コンテスト」というものを作り、航空会社に割り当てる枠とは別に、地方自治体と航空会社が一緒になって「これだけの取り組みを行って需要を増やすので、羽田枠をください!」という提案させ、それを評価して高得点のところに、その路線、その航空会社限定で利用できる枠を付与するという取り組みを行っています。
だいたい、観光客を呼び込む政策を推進するほか、リスク対策として、航空会社と自治体で搭乗率に関する規定を結び、一定の搭乗率以上であれば航空会社が自治体に、下回れば自治体が航空会社に協力金を支払うなどの連携をしていたりします。
基本的に応募できるのは1日3便まで、あるいは新規路線が中心ですが、そのほか需要が少ない一定の空港も認められています。
この羽田発着枠コンテストは、平成25年に実施され、以下の3つの路線が選定されていました。
- 山形(JAL:1便→2便)
- 石見(ANA:1便→2便)
- 鳥取(ANA:4便→5便)※益外便益1枠を含む
この取り組みにより、今まで1日1便だった羽田=山形と羽田=石見は1日2便となり、各段に利便性が向上しました。鳥取はこれによって1日5便にもなったんですね。
この平成25年から始まった取り組みは、3空港とも延長が認められ今に至りますが、今回ついに期限が切れることとなり、枠を5枠に増やした上で選び直しをすることになりました。
コンテストで獲得した路線は事実上減便ができない(減便の場合はコンテスト枠を返上)ので、意外と申請が伸びない部分もあります
羽田発着枠コンテストの結果
今回、令和2年冬ダイヤ~令和4年冬ダイヤの3年間を期間とした枠の配分を募集したところ、5つの枠に対して7つの空港から要望が提出されました。
これらの7つの自治体から提出された要望書を、国交省の外部有識者が評価した結果は、以下のとおりとなりました。
順位 | 結果 | 空港名 | 航空会社名 | 運航本数 |
---|---|---|---|---|
1位 | 【決定・継続】 | 鳥取空港 | ANA | 4便→5便 |
2位 | 【決定・継続】 | 石見空港 | ANA | 1便→2便 |
3位 | 【決定・継続】 | 山形空港 | JAL | 1便→2便 |
4位 | 【決定・新規】 | 大館能代空港 | ANA | 2便→3便 |
5位 | 【トライアル・新規】 | 三沢空港 | JAL | 3便→4便 |
6位 | 【トライアル・新規】 | 下地島空港 | スカイマーク | 0便→1便 |
7位 | 【落選】 | 佐賀空港 | ANA |
やはりこういう採点評価式で行うと実績があるところが強くて、第1期で選定された鳥取、石見、山形空港は引き続き順当に選ばれました。よって、これらの3路線は、現状の運航形態を続けることが可能となりました。
これらに続いて4位で選ばれたのが大館能代空港です。従来2便であった大館能代便は、これで3便体制になります。
ここまでは、令和4年の秋まで、3年間確定ということなります。
そして最後の1枠に滑り込んだのが三沢空港。僅差の6位に下地島空港…だったのですが、ここで国交省がまさかの横やりをかましてきました(笑)
5位(羽田=三沢)と6位(羽田=下地島)の総得点が僅差であったため、両者にて1年間のトライアル運航を実施することとし、その実績について有識者が再度評価を行い、当該1便の最終的な配分先を決定することとします。
募集要項に点数で決めると書いておきながら、点数が僅差なので2年間両方に暫定的に枠をふり、その後の実績で再度評価を行い、片方からは枠を召し上げるというルールを後付けで発動しました。
これ、新幹線と競合する三沢空港より、観光客が多くて新規路線の下地島のほうが有利ですよね。三沢が1日3便運航している実績ある路線だったのに対し、下地島が新規路線の提案だったので配慮したのでしょうか…。
そして、残念ながら佐賀空港は唯一の落選…。評価書自体はまぁなんというか普通ですが、現状で1日5便も飛ばしていて、さらに福岡空港を利用する人も多いんだから6便目はいいでしょ…ということでしょうかね。
実際、審議の中では他の空港に比べて厳しめのコメントがありました。
・現状では福岡からのビジネス客がターゲットであると思うが、6便になってもそうした旅客需要を維持できるのか確からしさを聞きたい。
・九州の入口としての佐賀の魅力を最大限活かすという観点から、例えば、新幹線の整備をさらに進めていくというような視点もあり得るかと思うが、どのようにお考えか。
新幹線にしたら?なんて航空局の会議で言われちゃいましたね(笑)
羽田=下地島路線がスカイマークにより就航へ
今回の政策コンテストの結果によって、まず2年間のお試しではありますが、今年の秋から羽田=下地島へのスカイマークの就航が決まりました。
前回はJALとANAの既存路線の増便でしたので、今回、羽田=下地島線は政策コンテストで初めて選ばれた新規路線ということにもなります。
下地島空港は、現在成田空港からジェットスタージャパンが1日1往復就航していますが、羽田空港からの就航は初めてです。私も宮古島自体に行ったことがないのですが、下地島空港は非常におしゃれな空港だと聞いていますので、早く訪れたいところですね。
ただ、ジェットスターとの競合は外部有識者も懸念していました。現状でもオーバーツーリズム気味な宮古島で、2社が維持できるのか、と。
実は今まで政策コンテストで枠を与えられた空港は、すべてJALまたはANAの1社のみが就航している路線でした。なので、地方自治体も他社のことを考えずに、コンテストの提案で搭乗率保証などを航空会社と結んだりすることができました。
ところが、今回は先にジェットスターが就航しているのにもかかわらず、宮古島市などがスカイマークに協力することになっています。いくらジェットスターともちゃんと協力しているとはいえ、ジェットスターが撤退する羽目になったら、何のための政策コンテストなんだという話になってしまいます。下地島空港の路線、減っちゃうわけですからね。
なので、イケイケなスカイマークでも、航空運賃はあまり過激なことはしないんじゃないかな、なんて思っています。格安はジェットスターの成田便、スカイマークの羽田便はそこそこのお値段で羽田のメリットを最大限売り込むという形になるのではないでしょうか。
宮古島といえば伊良部大橋。下地島空港に到着して宮古島観光するならこの橋を渡っていくわけですが、ここはわたってみたいですね。沖縄本島だと海中道路とか古宇利大橋などは走ったことがありますが、早く宮古島にいってここドライブしたいですね!
まとめ
羽田発着枠政策コンテストの割り振り結果が発表され、従来の鳥取、石見、山形のほか、新たに大館能代、三沢、下地島の各空港に設定されることになりました。
今回目玉なのは下地島でしょう。スカイマークが運航し、羽田からの新規就航ということになります。これはちょっと面白い感じになるかもしれないですね。
私もいつか乗ってみたいと思っています。楽しみです。